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試着室の向かい側にある椅子に腰を下ろしながら、玲奈が言う。
「分かりやすい?」
「うん。
だって、ふとした時の『可愛い』は愛也に対しての言葉だよね」
「私?」
洋服に対してじゃなくて?
「どう考えてもそうでしょ。
あーあ……要するにノロケかあ」
「そ、そんなつもりは……」
ため息混じりにそう言われて、タジタジになる私。
ノロケるなんて、そんな余裕はいまだに持てない。
先輩の動向一つですぐに気持ちがゆらゆらしたり、ぐらついてしまうからだ。
「悩む事ないんじゃない?」
「え?」
「ワンピース。
どれを選んでも可愛いって言ってくれるよ」
「……」
玲奈の言葉に。
ホッとしたような、背中を押してもらえたような。
そんな感覚を胸に抱きながら、私は試着室のドアを閉めた。
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