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ドアがノックされた。
「大丈夫?」
光の遠慮がちな声。コトって何かを置く音。そして気配は遠くなった。
朝が来たんだろう。光は仕事に行くんだ。私におにぎりを作って。自分も忙しい朝に。
スマホを置いて、パソコンから離れた。立ち上がって窓に近づく。思いっきりカーテンを開けた。
玄関で靴を履く音が聞こえる。
部屋のドアを開けた。やっぱりドアの横におにぎりが。
光は驚いた顔で、靴を履きながら私を見る。
「大丈夫?」
「ありがとう!いってらっしゃい。」
私たちの声が重なる。二人で微笑みあった。
「いってきます。」
光は小さな声でそう言って、玄関を出ていった。
3番目の私は、やっぱり3番目にふさわしい人間だったのかもしれない。
玲子に勝ちたいって、そんなことばかり考えていたかもしれない。本命がいながら、適当な2番目を3番目を作るようなペラペラな男の3番目にふさわしかったのだろう。
よかったんだ。捨てられて。ブロックされて。
必死で生きている人に会えた。
自分も必死で生きながら、その上、何かをしようとしている人に会えた。そんな生き方に会えた。
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