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あきら、僕、佐渡。章を示す呼称。それから好きなもの、嫌いなもの、誕生日。最悪、誕生日も知らなくていい。名前を呼ぶだけで、その名前さえ、自分の決めたもので、もしくは相手の好きな呼び方でいい――
それだけで全てを示しきれたらどんなにいいだろうか。全てを示すことができたら。そう章は思う。
もっとシンプルに生きてみたい。心を覆う外枠も越えて、ただの自分で、誰かと繋がることを許してほしい。
けれど、そんな夢を、カコを好きになるほど自分が嘘だと叫びそうになる。嘘なんだという気持ちが、痛みとなって現実に呼び醒ます。
電子の海にある真実をまだ、さらうことができない。
『あのね、わたし あきらと会ってみたい。あわなくても、顔を見て話してみたい』
嘘つき!と叫ぶ声。章は、自分のその声を胸の奥底に封じている。いつか、別の声にかわるのを恐れながら。
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