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でも、ああ、本当に私ってついてないわ。まだこんなところにいるんだもの。さあ、お姉さんと手をつなぎましょう、お話の途中でいなくなったりしちゃだめよ。足はすくんでるみたいだけどね。ここからが大事なんだから。
逝けなかった原因はわかってるわ。今日がとっくに終わってたせいなの。何時間も彷徨って、先人たちを避け続けてたせい。どいつもこいつも、後から来る人のこと考えずに、好き勝手に死に散らかってるんだから。おかげで私は、心に決めた日に遅れたわけ。
大切な日には約束をするでしょう?記念日のデートはお店を予約するでしょう?飛行機のチケットは事前に買っておくでしょう?それとおんなじ。大切で重要で重大だから約束をする。でもそれを破れば成果も効果も見返りもない。時間に遅れればその席には違う誰かが座る。日付を間違えれば当日無計画に来た客と同じに待たされる。どれだけ約束してても、どれだけ上客でも、約束を破れば無効にして無関係。
私はあの日に死のうと誓った。自分だけの勝手な誓いと思っていたけれど、きっと神様が聞いてたのね。神様でも、運命でも、この世のどこかの歯車か、予定表みたいなものでも。とにかくそれは組み込まれた。そして私は次の日には死者になっている前提で動き始めた。でも私は翌日まだ生きていた。ちょうどこんな暗い時間だったけれど、日付は変わっていた。死者として然るべき場所に送られるはずの私は、まだ肉体にあってこの世の土を踏んでいた。だから予定通りにいかずに、こんなところを彷徨っているの。
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