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「だからさぁ、いつも言ってるじゃん、
こんなロケ台本、素人のバイト学生だって書けるんだよ」
壁の時計は、深夜2時を5分ばかり過ぎたところ。
そう、泣く児も黙る丑三つ時。
いつになく甲高い銀ディレクターの声が、
テレビ局の狭い会議室の中に響き渡る。
この人の声は、何を話していても、
それがたとえ褒め言葉としても、ナゼか癇に障る――
そういう、どうしようもなく耳ざわりな声質だ。
「いいかぁ、マッタケ」
ほらね、彼にそう名前を呼ばれただけでも、
俺は無性に腹が立ってきて、
思わずテーブルの下でこぶしを握り締めてしまう。
が、もちろん、そのこぶしを
彼の前に振りかざすような無作法なまねは決してしない、
というか、絶対にできない……
まだ駆け出しの放送作家としては。
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