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私が初めてあの方にお会いしたのは、凍えるような冬の夜。 まだ十四の義務教育課程の学生の時でした。 私の家は代々守城家に仕える執事であり、私も将来そうなるべく教育を受けて育ちました。 が何分まだ義務教育すら終えてはいない子供、お世話係という名目であの方のお側に仕える事になったのでした。 四つの割には明らかに平均より小さくか細いお身体に無残に散りばめられた無数の痣。 言葉は一言も発せず、ただ怯えた表情で所在無げに震えるだけの宝石のような瞳。 一瞬で庇護欲をそそられたのは云うまでもありません。 後から思えば私もまだまだ子供で、気負い過ぎていたのでしょう。 いずれ一人前となった時には正式な主人となるかも知れないお方。 過度な緊張と遠慮が、知らず壁を作っていたのかも知れません。 そんな私に心を開いて下さらないのは当然の事でした。 一月が過ぎ二月が過ぎてもあの方は慣れるどころか視線を合わせてくれる事も無く、近付いただけでお可哀想な程に小さなお身体を震わせて怯えておいででした。 夜は中々寝付けず、やっと寝付いても魘されて直ぐにお目覚めになられ、直接手を取る事もましてや震える身体を抱き締めるなんて事は出来る筈も無く、掛布の上に手を添えて大丈夫だと、傍に居ると告げるしか出来ない自分が只々無力でもどかしい思いで一杯でした
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