プロローグ

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プロローグ

 真っ白な深白の闇の中、声だけが聞こえる……。  新しく生まれいづる者よ。  抗う術も知らず……それさえも知らされぬ者よ。  受け止めるが良い。  真実と……虚偽のランデブーを。  ワシこのランデブーを別の言葉に……。  ……まあ、よいわい……。  在るが儘。 成すが儘。  それが……お前さんの……為に……。  ……。  何処から聞こえたのかさえも解らなかった。  でも……。 不思議とその声は暖かくも感じ。 そして、同時に冷たくも感じた……。  冷ややかな霧雨に包まれたかの様な、白色なのか灰色なのかも解らない空間。  たった一粒の、水滴内での出来事……。   僕は、そんな短くも長くもある様な可笑しな夢を見ていた……と、思う。 「――様。 起きて――」  誰かを……呼び起こそうとする声が聞こえる……。  何故、目覚めを拒絶するの? 目覚めを受け入れるのを、何故拒絶するの?  素直に目覚めてあげたいけれど、悪戯心で目覚めてあげないの?  ……僕なら素直に目覚めてあげられるのに……。  ……どれだけの時間を越えたのかも何も解らなかったが。 ただ、そこに声があった。  「――ル様。 お目を――」 僕の、心の中の恐怖心にも似た何かが、ほんの少しばかり僕の耳の感覚を引き止めていたのだけれど、心の弱さを払い除けるだけの勇気を、ほんの少しだけ耳の辺りに与えてあげる事にした。   すると、ほんのり耳の辺りだけが緊張感が増し始め、耳の奥深くに静寂にも似た何かがひょっこりと顔を出した……。 「起きてください――。 ヨル様」  僕は、その瞬間はっきりと聞こえた。 ママの声ではない女性の声。  声だけで判断するのは早計なのだけれど、何故か、声だけでも十分理解してもいいと思える気持ちが心に溢れた。  その女性は……。  僕を呼んでいる。
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