ラマヌ、SNSを普及させる

4/5
前へ
/17ページ
次へ
「それでね勇者様、私の新しい魔術を発表します! その名も『ソーシャル・ナントカ・スペル』です! 略してSNS」 「ナントカだなんて不明瞭極まる表現が混じっている時点で嫌な予感しかしないぞ。今度はどこの山を吹き飛ばすつもりだ」 「嫌ですねえ、人を破壊の権化みたいに言うなんて。この魔術はすっごく平和的なんですよ。平たく言えば世界中の人たちと交換日記ができるものなんです」 「交換日記? 親しい人間同士で日記帳を書き合うというアレか?」 「ええ。使い方は簡単。あらかじめ私がSNSの魔術を込めた日記帳を何冊か用意します。今回、すでにお友達の何人かにはその日記帳を渡してあります」  どこからどう見ても普通のノートだった。その日記帳に魔術が込められているとは信じがたいが……。 「このように、何もしなければ自分の日記しか読めません。けれど『お料理の情報が知りたい~!』と念じながらページを開くと……ほら! お友達の一人が日記帳に書いたお料理のレシピが読めちゃいます!」  そこには確かにラマヌとは筆跡の違う他人のレシピが書かれていた。 「こうやって友達の日記も念じることで読めますし、そこにコメントを書き込むことも出来ます。もちろん、そのコメントは相手にも読めますよ。そうやってお互いにコミュニケーションを取り合うことだってできちゃうんです」 「なるほど。だから交換日記と言ったのか。だが俺には利用価値が見いだせないな。はっきり言って、他人の日記など読んでいて面白いのか?」  「考えてみてくださいよ。仮に勇者様が凶暴な魔獣を倒したとするでしょ? その戦いの記録を勇者様が日記に書いたとたん、いろんな人から『さすがですゴッドフレイ様!』っていう返信が届いたら嬉しくないですか?」  嬉しいなそれは……。泣いて喜ぶかもしれない。けれど言葉には出さないゴッドフレイだった。 「分かった。それならば大きな問題は起こらないだろう。近所の道具屋に頼んで、そのSNSの日記帳を販売してもらうか」 「ぜひ! 友達の友達、さらにはその友達といろんな人同士が繋がり合うんです。きっと楽しいですよ!」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加