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邂逅するふたり
雷鳴のような音が鳴り響いた。
魔王は僅かな痛みこそ覚えたが、大事は無かった。安堵していると、目の前に二人の人間がいることに気付いた。
「ちょっ、お前! 本当にやったのか!?」
「ええ! 私が発案した出会い系魔術なのです! TAXIを改良した新呪文『ミーツ・インテリジェンス・クロス……』」「名前はどうでもいい!」
「ええ~? 勇者様が出会いたいって言ったからやったのにい」
勇者……勇者だと!?
確かに、かつて死闘を繰り広げたあの人間の面影はあるが……。その末裔であればかなりの力量であるに違いない。
いや、それよりも! なんだあの小娘は!? 人間の器では考えきれないほどの魔力と素養を秘めている! こんな奴らを相手に勝てる自信はない!
「そういや魔王の弱点ってなんなんでしたっけ?」
「うさぎの糞だってよ。さすがにオーマさんの冗談だとは思うけど」
しまった! 弱点もバラしているのだった! うさぎの糞だけは勘弁してくれ!
勇者の末裔と思しき男は、魔王に対してうやうやしく頭を下げた。
「あなたがオーマ殿ですか! 私はゴッドフレイ。勇者の血を引く剣士であります。あなたも魔王を討滅せんとする同志とお見受けしました。勝手ながら、その知恵、その能力。私の大願成就に役立ててはもらえませんか!?」
「た、大願成就とは?」
「今さらなにを仰るやら! 魔王討伐に決まっているでしょう!」
「いや、それは流石に早計では……まだ魔王も復活してはいないのですし……」
」
「何を弱気なことをおっしゃる! 仮に復活していなかったとしても、魔王が寝ている間に倒せるのであれば楽でいいではないですか!」
もう四面楚歌だった。
真実を伝えても殺されるし、逃げる場所も無い。大人しく、この男についていくしかないのか……。
「パーティを組んで下さいますか! ありがとうございます! ところでオーマ殿。失礼ながら見るからに邪悪そうな衣服に身を包まれておりますね。まさか、魔王を崇拝しているわけではありますまいな?」
崇拝どころか本人だよ、とは口が避けても言えなかった。
勇者の後裔ゴッドフレイは、こうして「魔王を引き連れながら魔王を探す」という矛盾にも気付かずに旅を続けるのであった。
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