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「私の御祖様は、勇者だったのだ。生前、ヤッパル魔術学院の設立に尽力したと伝え聞いている。その縁で、僭越ながらも剣術の特別講師として招かれたことがあるのだ」
「勇者? 勇者ってあの勇者ですか?」
「他に勇者は居らぬだろう。悪しき魔王を封……いや、討伐した英雄だ」
ラマヌは急に黙りこくってしまった。まさか、ゴッドフレイが勇者の後裔と知って畏まってしまったのだろうか。今までもそういった経験はあった。だからゴッドフレイは自身の素性を明かすのを好まないのだ。御祖様を敬う気持ちに変わりはないが、ゴッドフレイと勇者はあくまで別人。同一視されても困るだけだ。
沈黙を守っていたラマヌは、急にゴッドフレイの手を握りしめた。
「ラマヌちゃん……思いついちゃった! これって、人生のターニングポイントかも!」
「ラマヌ殿? 急に手を握られても困るのだが。幼くとも女性なのだ、もっと慎み深くあるべきだろう」
「いいえ、絶対に離さない。だって、ゴッドフレイさんはラマヌちゃんの勇者様なんだから!」
ラマヌが「ヘイ、TAXI!」と叫んだ。すると、ゴッドフレイの身体は浮遊感に包まれる。
「なっ、何を!?」
「だいじょぶだから! この魔術、今のところ失敗したことないし! たぶんいける!」
「今のところ!? たぶん!? つまり不確実ではないか!」
ラマヌが「落下の衝撃には備えてね!」と言ったところで、ゴッドフレイの意識は途絶えた。
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