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「これは、ゴッドフレイ様ではありませんか!? しかもラマヌまで隣に!? この度はラマヌがご迷惑をおかけしたこと、誠に深くお詫びいたします!」
ヤッパル魔術学院の講師からは、真っ先に謝罪を受けた。ちなみにゴッドフレイもラマヌも、今までの経緯については一切話していない。話していないのに、出会い頭で上記のようなことを言われたのだ。
つまり講師は「聞くまでもなくラマヌが何かをしでかしたのだ」と確信している。まあ実際そうなんだが、ゴッドフレイはこの時点でラマヌの学院内での立ち位置を察した。
……とんでもない娘と関わってしまったな。
講師に対し不平の一つでも言おうかと思ったゴッドフレイだが、それは喉の奥に押し込めた。ラマヌの尋常ならざる魔術を目の当たりにして感嘆しているのは事実であるし、偉大なる御祖と縁ある学院の講師を邪険にしたくもない。
学院の講師は冷や汗を流しながらゴッドフレイに問いかけた。
「お怪我はされませんでしたか? ラマヌには後々きつく罰を与えますので」
「いえいえ、少し驚いてしまっただけですよ。彼女に罰を与えるなどとんでもない。実に才ある少女ですね。私自身、魔術を不得手としているものですから、羨ましいくらいですよ。彼女がここを卒業した暁には、私とパーティを組んでもらえたら嬉しいですね」
ゴッドフレイは適当なお世辞を並び立てた。ここは波風立てずに帰りの路銀だけ頂戴するのが無難と判断したのだ。いや、待てよ。金銭をたかるような真似をするなど御祖様の名を汚す行為に相当するかもしれない。
講師と話しながら会話の道筋を考えるゴッドフレイ。思考に集中していたせいか、側に居たラマヌが獲物を狩る野鳥のような目をしているのにも気付かなかった。
「ほら、先生! 勇者様もこう言ってるよ! 勇者様は私とパーティを組んで旅に出たいんだって!」
……は?
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