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いきなり話が飛び過ぎている。あれはお世辞にお世辞を塗り固めたものだ。ラマヌは将来とんでもない大魔術師になる素養を秘めているかもしれないが、今すぐ連れ立って旅に出るなど考えられない。
しかし、講師はラマヌの言葉を聞いた途端に色めき立った。
「なんと! そういうことでしたか! でしたら卒業後と言わずに今! 今パーティを組みましょう! ゴッドフレイ様も一人旅では何かと不自由でしょう?」
「いえ、我が身一つで間に合っています」
「ラマヌはまだ魔術師の卵ですが、秘めた才能は他の者を圧倒しております。きっとゴッドフレイ様のお役に立つことでしょう」
「流石にそれは性急過ぎるのではありませんか? 旅は長く辛いもの。女子供に務まるとは到底思えませんが」
「今宵は宴の席を設けなくてはなりませんなあ! 偉大なる勇者の後裔たるゴッドフレイ様と、若き魔術師ラマヌの旅路に幸多からんことを!」
聞けよ人の話を! 「イエス」か「ノー」の選択肢くらい選ばせろ!
心中で毒づいたゴッドフレイだが、講師はもうラマヌを旅に出させる気でいるらしい。
「ラマヌはゴッドフレイ様と同行し『魔術師としての実習訓練をしている』という事にしましょう。これならば休学扱いにせずとも大丈夫ですし、実績次第ではすぐにでも卒業も可能となるでしょう」
「いやいや講師殿。流石にそれは特例が過ぎるというもの。由緒あるヤッパル魔術学院の学び舎で修練を重ねた上でこその魔術師でしょう? いきなり実戦に放り投げて卒業扱いにさせるなど、学院側の怠慢にさえ思えますぞ。第一ですな、失礼ながら貴方一人の権限でそこまでのことができるとは思えませんね」
「私は学院長ですが」
「マジすか!!!??」
「マジの大マジですよゴッドフレイ様。学院で顔を合わせるのは初めてでしたね」
「こんな初顔合わせある!!????」
驚きのあまり、ゴッドフレイは砕けに砕け過ぎた物言いをしてしまった。
「ヤッパル魔術学院の長として、ラマヌの『実習訓練』をここに認めます! よし、これで体のいい厄介払い……失礼、ラマヌという大器を大海原に解き放つことができますな! ははは!!」
「は、ははは……」
もはやゴッドフレイには乾いた笑いしか出なかった。
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