思い出

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 最近、初恋の子の夢をよく見るようになった。  その子との接点はそれほど多くなかったと記憶している。 ただこっちが一方的に思い馳せていただけで、結果的にその恋が実ることはなかった。 十余年が過ぎた今となっては淡い青春の一ページとして俺の歴史に刻まれている、そんな子だ。 きっと彼女の記憶に、俺は存在していないと思う。 そんな関係の子だ。  だから俺は彼女を夢見た時、あの頃を懐かしむだとか、その子との思い出を探るよりもまず「どうしていまさら?」という疑問への解を探るのに時間を使った。  そも自分が青春を生きていた時代まで、遡るだけで指が足りないというのに、初恋ともなるとそこから更に何年も戻ることになる。  別に、今に何か不満があるわけでも、その頃に特別な出来事があったわけでもない。 俺という人間は自分でも驚くほどに凡庸に暮らし、凡庸に生きている。 それじゃあ彼女に面影のある誰かと街中で擦れ違ったかと言えば、ここ一ヶ月は仕事以外の記憶が曖昧で何を食べていつ寝たのかも覚えていないほどだ。 誰かを記憶する余裕などなかった。 或いは、無意識に脳が記憶しているのだろうか。 そんな眉唾な話で納得するには、少し年を重ね過ぎたかもしれない。  結局俺はこの疑問に答えることが出来ないままでいた。
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