思い出

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 その夢は大体週に一度のペースで俺のもとへやってくる。 何度か続けて見ていれば何か変化があるかとも思ったが、どうやらそれもないらしい。    なんの変化もなく夢を見ているうちに俺の中にあった違和感や疑問も次第に薄れ、その逆彼女に逢えるということにどこか胸踊らせるようになった。 静かなその空間が愛しいとも思えた。 少なからず好意を持っていた彼女を間近で見ることが出来るというのも嬉しかった。 あの頃は俺も思春期で、異性を、彼女を見つめ続けるなど出来なかったからだ。 今は何かに遠慮することなく彼女を見続けることができる。 それもどうかとは思うのだが。  次第に俺は、その夢を見るのがちょっとした癒し……というか、一つの楽しみになっていた。 いつまで見ることが出来るのかもわからない、実際は今何処で何をしているかもわからない彼女のことをただ見つめ続ける夢。 医者に掛かれば間違いなく何か重い精神疾患だとカウンセリングが始まることだろう。 そう言えば彼女と一緒のクラスだったのは中学二年生の時だけだった気がする。 彼女とは三年のクラス替えで離れてしまい、それから顔を見かけることもなかったが……。  そう言えば名前、名前は何て言っただろうか。  すっかり記憶に靄がかかってしまっている。  
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