驚くことばかり

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驚くことばかり

  「じゃあそっちではよろしく頼むよ~!」  ……ノリ軽いな。  キャッキャしているが声は男性のようだ。こんな人知り合いにいたかなあと記憶を探るが出てこない。  でもこの声の主が今の状態に関わっているとなぜだか断言できる。  頼む? 頼まれたということは、私は声の主に頼まれてでここにいるのか?  だからなのか? こんな森の中にいても不思議と落ち着いていられる。確実に日本ではないこの場所で。  普通は突然こんな森の中にいたら動揺すると思うのだが……。  そもそもこの状況で冷静でいられるわけがない。  しかしこんな状況でも私に危険はないとわかる。まるで呼吸するかのように自然とそう思う。  自分の意思でここに来た? なんとなく無理やりではない気がする。  しかもここは私が暮らしている世界ではない……と思う。そんな気がするとしか言えないが。 「んん~」  つい声が漏れてしまった。  仕方ない、男性のような声以外の事がちっとも思い出せないからだ。  危険がないこのファンタジー感あふれる場所に自分がいるのは分かった。しかし何のために?  私のこれまでの生活は大丈夫なのだろうか。仕事は? 家族や友人は? 私は行方不明扱いなのか?  名前なんかの自分のことはもちろん憶えているし、これまで生きてきた記憶もきちんとある。  唸りながら色々と考えるがちっとも思い出せない。
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