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みえている景色
小森加奈のことを一言で表すなら、中立系女子、と言えるのだと、一年以上隣の席で過ごしてきた大島千尋は思っている。
女子高校生にしては珍しく、加奈はクラス内外のどの女子グループにも所属していない。女子はもちろん男子が相手でも、それなりのおしゃべりを誰とだってする。特に仲のいい相手や、嫌っている相手がいるようには見えず、彼女が円の中心であるかのように、本当に誰もが同じ距離、それも近くはないところにいるように感じる。
千尋は高校に入学して加奈と知り合い、席が隣同士と言うことで会話をする機会は多い。けれどそれは席が隣同士だからであって、けして仲がいいという表現をするような間柄ではないのだと思う。そもそも彼女の中には、誰かと仲良くしようという意識がないんじゃないかと千尋は思ってしまうくらいだ。
だから放課後、彼女が友達の相談にのっていると聞いて、千尋はつい驚いてしまったのだ。
あと一週間もすれば夏休み。そんな七月の中旬ともなれば、放課後とは言っても陽はまだ高く、外は暑い。エアコンの効いた教室からはまだ出たくないなと千尋が考えていると、隣の席でスマホを眺める加奈の姿が目に入った。
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