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「ユーリ!」  教室に入ると、クラス中の生徒が僕を出迎えた。 「昨日はちゃんと眠れた? あの部屋に、一人だったんだろ?」 「大丈夫。ちゃんと眠れたよ」  皆は僕の返事を悲しげな顔で聞くと、何とか声だけは明るくしようとつとめながら話を続けた。 「今日は、休んだ奴が学校中の五分の一を越えたんだ。みんな寮で正哉のために泣いてる」  僕は一回だけ「大丈夫だ」と笑ってみせると、あとは何も言わずに授業の準備をした。しばらくしてクラスがしんと静かになる。 「やっぱり、まだ信じられないよ…」  あちこちから小さな泣き声がわき、何人かは必死で涙をこらえていた。  いつも通りの朝。いつも通りのクラスの中で、小さく、大きなものが欠けている。  今日は、誰もがこうして涙を流すのだろう。一番最初に教室に入ってきた生徒は、そのまま泣き崩れたに違いない。  朝。正哉はいつも一番早くに教室に来ていて、教室に入ってくるクラスメートを迎えてくれていたから。  その日は皆、僕の名前を呼ぶ度に涙を浮かべた。 「ごめん…ユーリと正哉って、特別に仲が良かっただろ? だから色々…思い出が溢れてきて」 「…別に。かまわないよ」     
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