ポケットの中のメモ

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 ある日、買い物に行こうと思い外に出ると、意外と肌寒く、丁度、日陰干ししていた母の遺品のスプリングコートを羽織った。  鍵をポケットに突っ込むと、“カサリッ”と音がした。 ”あぁ。お母さんってば、レシートか何かを、ポケットに突っ込んだままにしていたのね”  そんな事を思いながら、ポケットから小さな紙切れを取り出す。  クチャクチャになったソレを、丁寧に広げる。  そこには母の文字で、『風呂場注意』と、一言だけが書いてあった。 “なんじゃこりゃ?”  別に、お風呂が壊れた事も、誰かが転んで怪我した事もなかったのに……と、思いながら、そのまま買い物に出かけたのだが、帰宅した途端、家の中の異変に気が付く。 ザァァァァザァァァァザァァァァ ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ ザァァァァザァァァァザァァァァ  激しく水が流れる音が聞こえる。 ”あ! そうだった! お風呂のお湯、入れっぱなしにしたまま、出掛けてしまったんだった!!”  慌てて、風呂場に行くと、そこには大量のお湯が、いつから溢れていたのだろう。  どんどん排水溝へと吸い込まれている様があった。 ”あぁ……勿体ない事したぁ”  少し落ち込みながら、“やっぱり、水量タイマー付の蛇口買わなきゃダメね”なんて事を思いながら、お湯を止めた。
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