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 ガヤガヤと昼時の教室は相変わらず賑やかで、机を合わせて向かい合う友達の声すら時折掻き消されてしまう。 「ん? 何々? ごめん、聞こえなかった」  タイミングよく、男子の笑い声が重なって、携帯を見ながら話した彼女の言葉をまた聞き逃してしまう。 「ほら見てこれ! めっちゃ可愛い!」  手首を返して見せてくれた画面には二匹の猫が寄り添う形をしたパンの写真が表示されていた。 「あのパン屋さんの?」 「そう!! 新作だって!! オレンジチョコとチョコミントのクリームが入ってるらしい!! どうしよう!! 帰りまだ残ってるかな!?」 「そう言えばさ、ちょっと前までは新作も残ってたよね。部活帰りに寄っても」 「そう!! この人がこうやって紹介するようになってからかな、お店も賑わい出してあんな時間に行ってもほとんど残ってないんだよね」 「SNSパワーは凄いね」 「ねー。お店のおじちゃんに見せたらさ、感心してた。自分でもやってみたらー?って言ったんだけど、こういうのは苦手だからなーって。この人にお礼を言いたいって笑ってた」 「ガハハーって?」 「そう、ガハハって。こっちまで元気になれるよね、おじちゃんの笑顔」 「うん、元気もらえる。放課後まで残ってるといいな。私も食べたくなっちゃった」 「今から全力で祈っとこ!」  そんな祈りを込めるように彼女は画像の下、ハートマークを人差し指でぎゅっと押した。いいねしました、という文字と赤く色付くハートマークを見届ける。 「早く放課後にならないかなー」 「なったところで帰る前に部活があるけどね」 「そうなんだよね~。あー待ち遠しい!」 「けど部活後の空腹に食べるパンがまた美味しいんだよね」 「そうそう。空腹は最大の調味料って言うだけあるんだよー。今日めっちゃ頑張ってめっちゃ疲れよう!! そんで最高のパン食べようっ!!」  机を揺らしながら意気込む彼女の傍ら、視界の端で窓越しの空を見上げれば消えかけたいつかの軌跡を背に、そのずっと先の方で今進む道だけを真っ直ぐ一本の白で描く飛行機が見えた。  男子達がまた笑う。大きな声でけたけたと。席の主がいないのをいいことに何やら悪巧みをしているらしかった。キラリと鋭利に尖った先端が光る。幾つも幾つも、キラキラと。椅子の上で、怪しく光る。 「うわ、悲惨」
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