ウマが合う

5/5
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
勿論、オーナーたちは断固反対。 種馬でも、いい金になるからな。 でも、それじゃぁ相棒が可哀想だろ? 本来であれば、こんな俺が懇願したって叶う願いでもない。 でも俺は、とことん説得し続け……そして、自腹を切って、ある程度の金も出した。 何としてでも、トウカイコウテイの……俺の相棒の願いを叶えたくて。 そして、俺が見守る中、安楽死させた。 その後、少しの間腑抜けになったものの、俺は今でもジョッキーとして活躍している。 “アイツのお陰でレース恐怖症が治ったからだろ?”とか、“そうしなければ生活出来ないからだろ?”って言いたいのかい? いや、違う。 ほら。 俺とアイツは“ウマが合う”って言ったろ? 俺はアイツじゃなきゃ信頼出来ないまんまだ。 いつ、振り落とされるか。 いつ、また大怪我するか。 不安で不安で仕方がない。 それなのに何故、活躍できるか。 それはアイツがいつでも、俺が乗る馬に乗り移ってくれるんだよ。 レースの時だけ、アイツは俺の前に現れる。 レースの時だけ俺はアイツと会える。 その時間が大好きなんだ。 いつでも互いに一体化し、風になる。 鞭も。 言葉も。 何もいらない。 俺とアイツは、それだけ“ウマが合う”んだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!