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勿論、オーナーたちは断固反対。
種馬でも、いい金になるからな。
でも、それじゃぁ相棒が可哀想だろ?
本来であれば、こんな俺が懇願したって叶う願いでもない。
でも俺は、とことん説得し続け……そして、自腹を切って、ある程度の金も出した。
何としてでも、トウカイコウテイの……俺の相棒の願いを叶えたくて。
そして、俺が見守る中、安楽死させた。
その後、少しの間腑抜けになったものの、俺は今でもジョッキーとして活躍している。
“アイツのお陰でレース恐怖症が治ったからだろ?”とか、“そうしなければ生活出来ないからだろ?”って言いたいのかい?
いや、違う。
ほら。
俺とアイツは“ウマが合う”って言ったろ?
俺はアイツじゃなきゃ信頼出来ないまんまだ。
いつ、振り落とされるか。
いつ、また大怪我するか。
不安で不安で仕方がない。
それなのに何故、活躍できるか。
それはアイツがいつでも、俺が乗る馬に乗り移ってくれるんだよ。
レースの時だけ、アイツは俺の前に現れる。
レースの時だけ俺はアイツと会える。
その時間が大好きなんだ。
いつでも互いに一体化し、風になる。
鞭も。
言葉も。
何もいらない。
俺とアイツは、それだけ“ウマが合う”んだ。
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