5人が本棚に入れています
本棚に追加
アンリアル
部屋に入ると、私はベッドの上に寝そべったままの鞄からスマートフォンを取り出した。
スイッチを入れると、薄暗い室内でぼんやりと画面が浮かび上がった。
部屋の電気を点けながら、私は画面に指を滑らせてロックを解除し、一番左上に配置してあるSNSのアプリに目をやった。
私はここ――SNS上ではアカイになる。
青とは対極にある色、赤になる。
ここでの私は、マキにすがりついて生きるアオイとは異なっていた。
ここでは、何を言うにも自由だった。
甘いものが嫌いと言ってもいい。
シンプルな方がいいと言ってもいい。
ここは狭い教室とは違う。
想像もつかないような大勢の人々が、ここに集い、思い思いに自分の意見を発信している。
私の意見に反対する人がいる代わりに、賛同してくれる人もいる。
居場所がどうこうなどと考えなくていい。
このSNS全体のどこかには、私が私自身をさらけ出しても、ここにいていいと言ってもらえる場所が必ずあるはずだった。
私はその場所を目指して、アプリにそっと手を触れた。
最初のコメントを投稿しよう!