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生活が落ち着きを取り戻したのは、今年も残りひと月と言う頃だった。父が死んだ日には頭上にあった葉はとうに散って、足もとにさえその姿をほとんど見かけられなくなっていた。
そしてそこからまた日は過ぎて、十二月二十九日。
大晦日がすぐに迫ったその日、およそひと月ぶりに、私は仙台へと向かった。
☆
「いらっしゃい」
仙台に着き、そして実家へと着いた私を、そう言って迎えたのは父の妹、すなわち私には叔母になる早紀おばさん。父の癌発覚後、また父の死後において、この人にはずいぶん助けられた。
おばさんは、東京に本社を置く企業に勤め、長い間、支社や営業所の立ち上げ要員として、日本中を転々としていた。しかし昨年の秋ようやく、希望していた仙台支社に身を落ち着けることができて、それを機会に、私が出て行ってからは父しか住み人のいなかった、おばさんにとっても実家となるこの家へと引っ越してきた。父の癌が発覚したのは、それから間もなくのことだった。
お邪魔します。実家なのにそう言うのはおかしくて、こんばんはと返そうとした。ところがそれよりも早く、おばさんが「あ」と小さく漏らし、私は開きかけた口を噤む。
「お帰りなさいよね、また間違えちゃったわ」
おばさんはそう言うと小さく舌を出す。茶目っ気のあるその仕草に、自然と私の口元は綻んだ。
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