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カンカン照りの中の石材で造られた公園だった。
中央には噴水があり。
石の柱で囲まれた公園。
野晒しのベンチも石でできていて、心底疲れている俺が座るとズボンを容赦ない熱が襲った。
ここはどこだろう?
俺の感覚ではここは夢のはずだった。
昨日、夜遅くまで勉強をして、歯を磨いて、お気に入りの短編小説を複読し、やっと寝ついたまではよかったが。でも、今はここにいる。
頭上には鳥一つ飛んでいない。
雲一つもない。
広い大地だった。
散々、歩き回り疲れていた。
地平線まで殺風景な砂粒が敷き詰められていた。
延々と3時間も歩いた靴の中には砂粒がたくさん詰まっている。
草木もない場所で、俺は噴水に近づいた。
風が強くて、噴水の水は右に左に水を撒いている。
真水を飲むわけにはいかないが、喉がすごく渇いていたので仕方なく。噴水の水を手で掬っては口に運んでいく。
4メートル近く噴き上げられる水は、水飛沫と共に俺に涼しさを与えては、空に虹色のカーテンを作っていた。噴水の着水場には当然、石で囲まれた水の溜まり場ができていて、底には四方に大口を開けた排水口があった。
排水口の一つに、アルバムが挟まっていた。不格好な挟まり方で、俺は水浸しのそのアルバムを引っ張り出した。
少しだけ開いてみると、俺の小学生の時に家族が撮った写真たちが載ってあった。
隣にはいつも可愛らしい女の子がいる。
年は俺と同じ。
白い歯を見せて笑うその顔には、無垢と無邪気さしか感じられない。
あの時、好きな女の子がいたんだ。
小学5年生の時に交通事故で死んでしまったけど、学校では隣の席にいつも座って、消しゴムを貸し借りしていた。大好きだったあの子。暖かい小さい手は今でも忘れることは無い。
「くうちゃん?」
俺の名。冴木 空助の名を呼んだのは、紛れもないあの子だった。
後ろを振り返ることもしなかった。
声でわかるんだ。
「れーちゃん」
ゆっくりと首を向けると、柱と柱の間に、れーちゃんがいた。
あの子は、目の前では変わらずに微笑んでいた。無垢で無邪気で……水色のワンピース。風に飛ばされないように、必死に片手で抑えた麦わら帽子。
「おっきくなったね」
「れーちゃん」
鈴原 玲子。小学校5年まで生きていた子だ。
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