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レイは空中を駆けながら、サブマシンガンを構え、輸送ヘリを狙っていると対空高射機関銃の引鉄を握る人間に銃口を合わせた。
地上にいた政府軍の軍人は何もできなかった。パラシュートもなしに飛び降りた青年が空中を自由に闊歩している。そんな非情式的な光景に息を呑み、思考が止まる。
レイは彼らの理解が追いつく間を与えない。一息もつけずに、躊躇いもなくサブマシンガンの引鉄を引き、軍人を一人、射殺した。
一瞬の出来事だった。輸送ヘリから誰かが飛び降りてきたと思ったら攻撃が始まった。宣戦布告もなしに。
「卑怯者!」と、撃ち殺された仲間を見て軍人が叫ぶも、赤髪の好青年はサブマシンガンを二丁構え引鉄を引く。
空中からサブマシンガンに刻まれた血の雨の如く、銃弾が雨のように降り注ぐ。
「クソ野郎!」
軍人は汚い言葉を吐き、赤髪の好青年を罵り軽蔑の目線を送るも、彼の目線に、赤髪の青年などいなかった。
「どこにいった!」
数十発の弾が軍人を外し背後の壁を蜂の巣にした。狙いを外したのではない。わざと、弾道を逸らし軍人が、その位置に移動するように仕向けた。
「・・・・」
軍人は息を呑んだ。自分のこめかみに熱を帯びたサブマシンガンの銃口を突き付けられる。
ありえない。今、さっき、空中で弾を撃ったばかりだというのに、赤髪の好青年はすでに、自分の横に移動していた。
それは、つまり、赤髪の好青年は自分が撃ったサブマシンガンの弾よりも、速く動けるということだ。弾より速く動ける人間などいるはずがない。そもそも、弾に早く動けるのならば銃が武器として成立しない。
「き、貴さ----!」
「死んで文句を言うなよ」
ありえない現実を軍人は否定しようとするが、それよりも先に銃弾が彼の脳を貫く方が先だった。
「行くか」
彼はすでに敵の本拠地にいることを再確認する。別に恐れなどなかった。今更、本拠地にいるからといって、それで攻撃を止める理由にはならない。戦争とはそういうものだから。
「敵襲ー!敵襲ー!」
明らかに敵意を持った者の侵攻に基地が慌ただしくなる。二人が射殺されたが、相手は立ったの一人。すぐに討ち取れると、今の彼の戦いも見ていなかった彼らは愚かにも思っていた。
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