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「撃て!」
相手は赤髪。かなり目立つので、すぐに見つかった。拘束するなど二の次、すでに二人が殺されていた。射殺を優先し、青年に向けて兵士が自動小銃による掃射を始めた。
だが、弾は命中しない。自分の銃弾よりも速く動ける青年にとって、弾などほとんど止まって見えていた。ステップを踏み、弾を交わしながら数名の軍人との間合いを詰めた青年は、あと三メートルと迫ったところで、地面を強く踏み飛び跳ねた。彼らを飛び越えながら、まるで、アクション映画のワンシーンであるかのようにサブマシンガンの引鉄を引く。弾倉に込められていた数十発分の弾が撃たれた。
弾はその場にいた全員の命を奪うには十分すぎた。
赤髪の青年は着地と同時に弾倉をサブマシンガンから外して腰のソケットに装填していた次の弾倉を銃器に込めた。その間、僅か五秒。気が動転している相手が攻撃に乗り出すまでの間に装填は終わる。
それに、青年の役目は騒ぎを起こし、自分に軍人の目を向けさせることにあった。輸送ヘリから一時的に注意を逸らす時間が必要であった。自分のように、空中を飛んで降りるといった器用なマネは他の者にはできない。
レイに軍の目が向いている隙に輸送ヘリは地上近くまで高度を下げる。地上二、三メートルのところでホバリング状態になると、ハッチから続けて、第二陣が地上に降り立つ。
「な、なんだ!こいつは・・・!」
兵士達は驚く。新たに降り立った人間が、青年と同じ赤髪だったことに。単純に赤いのではなく、青年と同じく血のように赤く黒い色をしている。だが、それだけでは、ここまで驚きはしない。彼らが驚きを露わにしたのは、降り立った大柄の男が、時代錯誤な格好をしていたからだ。ボサボサの赤髪で顔の一部が隠れていた大男は古代ローマ帝国時代に代表されるグラディエーターのような格好をしていた。強固な鎧に身を包み顔には包帯が巻かれている。同じく時代錯誤ではあるが、その格好にはよく似合う大剣を彼は携えていた。
「グオオオオ!」
大男は雄叫びを上げる。それは、彼にとって合図であった。古代ローマ帝国時代からの習わし、これから始まる戦いの合図。
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