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大剣を手に軍人に斬りかかる。何かの冗談のような敵の出現に動揺した軍人は銃を構えるのが遅れ、一度に三人が大剣の餌食となった。防弾チョッキを着ていたはずなのに、それをあっさりと切り裂いてしまう大男。だが、大振りな分、弱点もある。最初の青年に比べれば、その動きは怠慢に見えてしまう。
「撃ち殺せ!」
軍人らは落ち着いて小銃を構え、自分達に振り向こうとした大男に銃弾を撃ち込む。何十発の弾が瞬時に大男に命中する。実に呆気ない最期だった。見かけ倒しのでくの坊ではないか。
弾幕の中、彼らは思った。
「撃ち方やめー!」
さすがに十分だろうと思い指揮官が兵士達に小銃を降ろさせた。銃弾の雨を浴びせた。これで大戸湖を制止させられただろう。この様子なら、青年の方も大したことないな。などと、指揮官は思った。
その直後だ。立ちのぼる土煙の中から大剣が飛び出し指揮官の腹を刺したのは。
「ガハ・・・」
人の身体を貫いた剣は指揮官を突き刺したままで振り回された。まるで、突き刺さった人などいないかのような剣捌きだった。その剣は傍にいた軍人の首を跳ねてしまう。
「ヒィ!」
運良く大剣を交わすことができた軍人は恐怖のあまり、腰を抜かして動けなくない。
僅か一分足らずで周囲は血の海と化した。それも、大剣を携えた大男の手によって。自分達は最新鋭の装備で対抗したというのに。
あれだけの銃弾を浴びても大男は死ななかったというのか。だとしたら、バケモノではないか。いや、銃弾は大男に当たっていた。一、二発は。それ以外の銃弾は全て、彼が着こんでいた強固な鎧と大剣によって防がれていた。掃射された小銃の弾でも壊れない鎧と大剣。見掛けは古めかしい格好であるが、使われている素材と技術は最新鋭のものであることを知らない。
しかし、何故、大男は古めかしい格好をしているのか、疑問は残る。最新の素材と技術が用いられているのならば、それに合わせた武器を装備すればいいのに。
「ヒヤヤア!」
軍人の脳裏に様々な疑問が頭を過ぎりはしたが深く考えることはなかった。涙目になって逃げることに専念した。これ以上、バケモノのような大男を相手し続けることなんかできない。
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