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9月の中頃になると、
クラスで席替えが行われた。
新しい席は廊下側の一番うしろの席だった。
そして、悠斗の隣は篠崎になった。
力のない篠崎が机をソロソロと押して来ると
篠崎の方からあいさつをしてきた。
「えっと、神尾 悠斗くん、ヨロシクね。」
と、その時、机の脚が床の継ぎ目に引っかかり、
机の中からブックカバーがかけられた一冊の本が落ちた。
手一杯の篠崎の代わりに
悠斗がその本を拾い上げる。
「あの……ありがとう……」
篠崎は机を新しい席へ移し終えてから
申し訳なさそうに手を出す。
悠斗がその手に本を渡そうとしたその時。
「あれ、この本……」
外れかかったブックカバーの間から
見えた本の表紙に悠斗は気づいた。
「あ……だめ……」
静止する篠崎はあまりに小さく。
気づかぬ悠斗がブックカバーをめくると、
そこには見慣れたヒーローの姿が描かれていた。
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