僕と彼女の事情

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排水口から髪が生えたような状態なので、嫌なものを感じながらゆっくりと近づき便座カバーをサッとあげるとそこにはメロンほどの大きさの髪の毛の塊があった。塊から伸びた毛が、便器からはみ出していたのである。よく見るとその塊はゆっくりと回転している。毛の塊だと思っていたそれは、青白い二十歳そこそこの女の人の首であった。首はこちらを目だけでギロリと睨んだままゆっくりと顔を向けてきたのである。  母かな?と思った。  用を足した後に流したトイレの水流すさまじく、その吸引力たるや座っていた母の下半身を飲み込むにも飽き足らず、首から下までをも排水してしまい抜け出せなくなってしまった母なのではないか。新築だしサイクロン式で吸引力のものすごい掃除機もある時代なのでそういうトイレもあるやろなぁとこの状況を見た十人中九人は思うはず。しかしその恨めしげな青白い顔は母ではなく見知らぬ女であった。  明らかに人外のものを目の当りにし、その時の恐怖は言い表しようもないがそれよりも排泄したい欲求は限界を向かえ、とりあえず首はおいといてとズボンに手を掛け 「待ってまって待ってまって!」と女の首が慌てる。 「え~?」と俺。 「え~?やないやん。え~や。今どういう状況かわかってる?今、私、化けて出て待ってまって待ってまってズボン脱ぐな待ってってマジで待ってって。とりあえずズボンから手ぇ離して。ええから。とりあえずズボンから手ぇ離しって。」ちょっと恥ずかしそうに言う女の首 「いやでも俺、結構限界なんやけど。」今にも出そうなのである。 「いやいやいやいや限界もくそも。え?大きい方?小さい方?」     
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