9人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫かよ中山」
「ふぇぇ~~~んっ……四つ葉のクローバーが見つかんないよぉ……」
万里は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をこちらに向けてきた。歯を食い縛ってるのは止めようと必死になってるからなんだろーが、無駄な事だ。
俺は彼女の側にしゃがみこんで、ハンカチを貸してやった。懸命に拭く彼女を横目に、目の前に無数に広がるクローバーを見詰める。
「……クローバーなんか、何に使うんだ?」
万里は盛大に鼻をかむと、漸く落ち着いたのか澄んだ目で俺と同じ方向を向いた。微笑みながら、彼女は答える。
「あのね、もうすぐメルちゃんのおたんじょうびなの。四つ葉のクローバーは、幸せのしるしでしょ? だからね、見つけてプレゼントするんだ」
「はー……」
よく見れば、万里の手と服は泥まみれ。
一人で、こんなになるまで探してたのか。
最初のコメントを投稿しよう!