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「あれ、まりりんですぅ。……傘、忘れたのでしょうかぁ?」
周りは親に迎えに来て貰ってたり、各自で傘を持って来てたりしたが、コイツは違う。スレ違う生徒がクスクスと彼女の横を通り過ぎてく。
「あっ」
近付いて来た俺に気付いたのか、万里は無邪気な笑みをこっちに向けてきた。
「傘、忘れたのか?」
「違うの。……とられたの」
「とられた?」
「この雨、私が降らせたんだって。だからだと思う」
万里は泣き出しそうな顔になる。……そんなの、関係なくないか?
俺はさした傘を、そっと彼女に持たせてやった。
また、不思議そうに俺の方を見る。
「俺の、使えよ」
「えー? それじゃあ、大山君が」
「結城で良いって。俺はメルの……ってあれ?」
さっきまで隣にいたメルがいない。
まさか…帰ったのか?……くそ、せっかく格好つくと思ったのにな。
万里は何がおかしかったのか、アハハッと腹を抱えて笑い出した。そして、傘を俺に返してくる。
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