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「私さ心臓の病気だったみたいなの
それがとてもショックでさ…
前みたいにハルと遊ぶ事も出来なくなった」
「かなり塞ぎ込んでたの
それで何年も入院してて手術を受けることになった
そうじゃなきゃ死んじゃうみたいだから」
時折花火が千夏の顔を照すがその表情を
伺い知ることは出来ない
「でもね成功確率が50%
わかるかな…私半分の確率で死んじゃうんだよ」
花火の音に掻き消されるようにその声は徐々に
小さくなっていった
「だからさ、私今日このお祭りで賭けることにしたの
神様との賭けだよ
私が勝ったその時は願いを叶えてもらうの」
千夏はそういうと夜空の花火を見上げた
群青色の空には様々な大輪が花を咲かせている
千夏は何かを決意したかのようにこちらに顔を向けた
「ねぇ…ハル
今日はいきなりごめんね
何年も返信も返さなかったのに来てくれて」
「私は3日後に手術するよ
看護師からは安静にしてろって言われたけどさ
きっと今日みたこの花火が私を支えてくれると
そう思うんだ」
俺はその話を聞いて体に力が入らなかった
嘘だと思いたかった
何となく最悪のケースとして予想はしていたけど
それを本人から言われるとこうも堪えるものかと
痛感した
「手術に成功したらきっと私の願いはその時に叶うよ
なんたってこのお祭りは神様が約束してくれてるから」
俺の胸に何かが湧き上がってくる
小さい時から一緒にいた幼馴染みの千夏
花火が打ち上がる度俺の心臓をドクンと震わせる
それは何故か早くなっていく
「なぁ…千夏……俺はさ…」
ドーーーン!
今まで見た事の無い大きな花火が空を一瞬
赤色に染めた
それを皮切りに次々と大きな花火が絶え間なく
空を飾っていく
千夏は空を見上げていた
花火が千夏の頬を朱色に染めていた
その横顔はとても綺麗でとても儚かった
その時初めて幼馴染みでしかなかった千夏に
対する自分の気持ちがわかった
全ての花火が打ち終わったあと真っ暗な空間で
千夏が話しかけてくる
「その続きは手術後に聞かせてね」
小さくそう零し「行こっか」と言われ
呆然と車椅子を押して病院へと戻った
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