お母さんの恋の始まり

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あれは中3の最初のホームルーム。 「転校生を紹介する。皆驚くなよ?」 最終学年で転校かぁ。私も転校組だから気持ちもなんとなくわかる。この瞬間が緊張するんだよね。 ガラッ、と扉が開き、一人の少女が入ってきた。 その瞬間、誰もが声を失った。勿論、私も、裕ちゃんもだ。 「初めまして、東北中学から来ました。泉小春です。」やや緊張しながらハキハキと自己紹介をした小春ちゃん。けど、クラスメートの反応を見て、戸惑ってしまう。 そんな小春ちゃんと目があって、小春ちゃんも言葉を失った。 「月島さんが二人いる。」 「どうみても月島さんだよな?」 「あやめ、あんた双子だったの?」 クラスメートがどよめく。そう、泉小春は私月島あやめが鏡を見ているかの如くそっくりだったのである。 ホームルームが終わると隣に座った泉さんが話しかけてきた。 「月島あやめさんですよね?」 「私の事知ってますの?」 「母から聞いてます。私の母は、月島松竹さんの秘書をさせてもらってるんです。」 「ええっ、そうなんですか?」 「ふふっ、敬語やめませんか?私達似た者同士なんだから。」 笑いながら話す泉さん。 「フフ。そうね。じゃあ小春ちゃんでいいかな?」 「勿論、宜しくね、あやめちゃん。」 「東北でお父様の秘書を?」 「ええ。社長が三重に出張するからついてこいと。」 お父様は確かこの春東海支社の特別顧問に着いたのだ。お兄様が九州支社の取締役に昇進し、大倉財閥から引き抜いた裕ちゃんのお父様を東海支社の支店長に据え、実力を見に来た(本音は、甲子園のスターだったお父様と一緒に仕事をしたかった。事情を知るお兄様は怒っていた) 「ご、ごめんなさい。お父様のわがままで。」本当の事は言えない…。
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