お母さんの恋の始まり

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「じゃあここからお母さんを見つけるまで、俺の話にしようか。」裕ちゃんが話を紡いでくれた。 夕食ができて、まさに食べようとした時電話がかかってきた。 俺が出ると椿だった。 「姉ちゃんがいなくなってしまって…。」 俺は探しにいく準備をする。 「私もいく。」 「駄目だ。留守番してろ。」 「なんで?私のお姉ちゃんになるかもしれない人なんだよ。」 去年の全国少年サッカー選手権で、俺達の代から三連覇を飾った四日市南小学校。優勝したその日に椿に告白されて付き合いだした唯。兄ちゃんより先に…。 「こんばんは。」茜が訪ねてくる。 あやめを一緒に探しに行きたかったようだが、女の子を夜出すわけにはいかない。唯のお守りと俺の夕飯をお願いして、自転車を走らせるのであった。 「お母さんどこにいたの?」 「小学校。」「なんで?」 「歩きだったからかな。見つかりにくい所で歩いていけるとなると、小学校だったようだな。」 「あまり記憶にないのよね。どうやって学校に行ったのか。かなりショックだったんだろうな。」あやめは遠い目で話す。 お母さんは滑り台に座って泣いていた。 「月島さん。」俺は声をかける。 「し、嶋田君?どうして…。」信じられないという目で俺を見る。 「よかった。居場所当たった。」ほっとして近づく。 「来ないで。」「なんで?」 「涙でぐちゃぐちゃ。」 「ひょっとしてレア表情?」 「ば、馬鹿ぁ。ってもう側にいるし。」
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