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「臆病者」
ビセンテの目が険しくなる。
「何を言い出すんだ君は!」
「ウフフ。ゴメンナサイ。怒らせるつもりじゃなかったの。ふと、今二人が映画の中のワンシーンを撮影している最中だったら、私ならこんなセリフを言うかなと思って」
ニヤリと笑うビセンテ。
「一本取られたね。日本の女性は奥ゆかしく恋も奥手な女性が多いと思い込んでいたが、それは僕の偏見のようだったね。君のようなエスプリに富んだ会話が出来る女性もいたんだね」
「でも・・・やっぱり今のあなたは臆病者に見えるわ。恋が恐い?それとも私なんか全く恋の対象にならない?」
グリーンの瞳で私をしばらく見詰め、沈黙した後、重々しく口を開くビセンテ。
「もう恋などしないと思っていたんだが・・・・まさか極東の地で恋のシナリオが動き出すとは・・・・」
「じゃあ・・・・」
ニコリと笑うビセンテ。
「君は本気だと言った。僕らの恋のシナリオの最終的な伏線回収のその先にあるのは何だね?」
映画が・・・終わろうとしていた。
エンドロールが流れる。
私は言った。
「人生のエンドロールはあなたと一緒に迎えたい」
と。
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