泥水の中の清流

3/4
前へ
/4ページ
次へ
青年は女性の手を優しく引き上げ、女性は川から岸へと上がる。 「有り難うございます。手、汚してごめんなさい」 女性は青年にお礼と謝罪を言葉にする。 青年は改めて女性をみる。 川の泥水で汚れた化粧やワンピースの服は余所行きだったのか、かなりお洒落に見えた。 どうしてこんな事をと問おうとした青年。 その耳に、女性が抱えた箱から小さな声が聞こえた。 みーみー… 女性ははっとした表情で箱の中を覗き込む。 青年もつられて箱に視線を移せば、その中にはまだまだ小さな仔猫が二匹。 必死に鳴いていた。 「ああ…間に合って良かった」 女性は安堵した様にしゃがんで箱を下に置き、仔猫二匹を撫でた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加