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彼の背と同じくらいの高さの彼岸花の間を駆ける。
緋の間を駆ける。
息は切れない。
男は大きく跳ねた。
まだ息は切れない。
心地良かった。
まだ此処を去りたく無いとも思った。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
続きが分かった。まだ終わりで無い。
まだ走れる。
まだこの緋の中を走れる。
男はクルクルと回った。
鈴がシャラン、シャラン、と鳴る。
それでもクルクルと回っていると、唄えと言うように、また、シャラン、シャランと鳴った。
男は仕方ないなという気分になった。
また唄おう。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴が、そうだ、と言うようにシャラン、と鳴った。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
走っていると、不思議と続きが分かった。
男は一度も聞いたことのない唄を口ずさむ。
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