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火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
鈴が先を急かすように、シャランと鳴った。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
白の使者に守護される地よ。
ふと、幼子の声がした。
おかあさま!
今ね、あそこにね、綺麗な蝶がいたの!
これは……。
男は目を閉じた。
その間も唄は止めない。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
白の使者に守護される地よ。
今度は、少年の声がした。
こんな家なんか出る!
父上のいうことなんか聞くもんか!
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
白き使者に守護される地よ。
愛し子をその腕(カイナ)に抱け。
青年の声がする。
ごめん。ごめん。
君と生きると約束したのに。
君と共にいると約束したのに。
火夢繪よ、火夢繪よ。
緋き地よ。
鈴の音に導かれ開かれる、孤独の地よ。
白き使者に守護される地よ。
愛し子をその腕に抱け。
その孤独を癒すように。
男は涙を流した。
泣かないではいられなかった。
喜びと悲しみとが、彼を支配した。
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