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「なるほどね。それで今日は眼鏡だったんだね」
さっと身を翻し、麻酔針を避ける。
標的を捉えられなかった針は、ぷすり、と壁に小さな穴を空けた。
「賃貸なので、あまりお店を壊さないでもらえないかな?」
「あなたがおとなしく従えば、手荒な真似はしないと常に言っているはずです」
「だから、僕も言ってますよ。僕に触れることができれば、なんでも言うこと聞きますよって」
私はテーブルを踏み台に、青井さんに飛びかかる。
しかし、当然それもかわされる。
「まあ、真白ちゃんじゃ、一生かかっても無理だと思うけど」
腹立たしい。いけ好かない。
触れたいのに触れられない。
この、私と青井さんとの攻防が始まったのは、2週間前。
佐藤玄理(さとう・げんり)主事に呼び出されたことから、話は始まった。
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