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青井さんの説明によると次の通り。
さっき、カフェを襲撃してきた素人武装集団はテロリスト集団の一員。
彼らの目的は、この地方分権が過度に進んだ世界の是正。
地方分権により、知事に権力が集中してしまった状況と、地域間格差が拡大している現状に不満を抱いているらしい。
今まではデモ活動など言論の力で平和的に世の中を変えようとしていた。
しかし、半年ほど前に活動者数名が(彼らいわく不当に)逮捕されたことを契機に方針が一変。
今は市民を巻き込むテロ活動を計画しているとのこと。
そして、遊園地に爆弾を仕掛けたらしいのだ。
「それが事実だとしたら、すぐに県庁に報告しないと……!」
「今はまだ待って。こちらが動いてるのが相手にバレたら厄介だから」
「でも……」
「証拠を掴んでから報告してほしい」
「まあ、いいんじゃね。てか、そんなに詳しく知ってるんだよ青井さん」
紅雄がもっともな質問をする。
もしかして、青井さんもテロリストのメンバー?
「買い出しに行ったら怪しい会話を耳にしたから尾行して盗聴器を仕掛けたんだよ」
でも、それがバレてカフェがあんなことになっちゃったんだよね。
やれやれ、というように青井さんは肩をすくめた。
「で、私は何をすればいいの?」
「協力してくれる?」
「当然でしょ。県民の皆様の安全を守るのが私たちの仕事!テロを防いでから、あなたも捕まえるけど」
「立派な暗殺者さんだね、真白ちゃんは」
「おい、あんまりうちの相棒をからかうなよ、おじさん」
「運転手の彼氏には申し訳ないんだけど、彼女のこと少し借りるね」
「彼氏じゃない!!」
私と紅雄、思わず同時に同じことを言ってしまった。
楽しそうに笑う青井さん。
「ごめんごめん。でも、男女2人のほうが都合がいいんだ。今から行くのは《海の見える遊園地》だから」
我が県には代表的な2つの遊園地がある。
一つは家族連れで賑わう《山の上の遊園地》。
もう一つがカップルの聖地、《海の見える遊園地》だ。
「嘘でしょ……」
私と青井さんが、あの恋人同士がひしめき合う《海の見える遊園地》に?!
将来、彼氏ができたときに行こうと思って、まだ一度も行ったことないのに!
ミラー越しにまた目が合う。
でも、気になる人と一緒に行けるなら、まあ、その……。
案外、悪くないかも!
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