1人が本棚に入れています
本棚に追加
その赤黒いゼリーの中に、荷物のように紐で縛られたブルーシートが沈んでいた。
ごくりと唾を飲み込んで、手近にあったハンガーで包みをつっ突いてみる。もとは大きかった中身が小さくなったのか、結び目は硬いものの紐とシートの間はかなりゆるかった。紐が外れ、ブルーシートが開きかけ、隙間ができる。
ピンポン玉のように濁った瞳が、その隙間から男を見ていた。
思わず仰け反った男の背に、何かが背に当たった。振り返ると、この部屋の女が立っていた。手にバールを持って。女が手のバールを振り上げ、男の頭に、
倒れた男を前に、私はため息をついた。まさか本当に部屋に住み着いている奴がいるなんて。スマートホンの着信を見て駆けつけてみたらこのザマだ。
ケースの中では、腐ってほとんど原型のない生首が、恨めしげに私をにらんでいる。元彼のFは、本当に別れるのに苦労した。ゴネてゴネて、あの世に強制送還しないとならなかった。死体を処分する空き地なんかなく、焼くわけにもいかず、コンパクトに切り分けてしまっておいたのだけど。
さすがに二人分の死体を収納する余裕はない。さて、どうしよう。
最初のコメントを投稿しよう!