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「遅くなぁい?」
「確かに……」
「登っていく時、あいつ、なんか企んでそうだったからなぁ……」
「まさか! 周りの森に入ったりしてないでしょうね?」
「蚊が沢山いるだろうし、入らねーだろ?」
お調子者の昭雄がバカなことをしていないか心配していると、上の方から何かの鳴き声なのか、叫び声なのか……微かに甲高い音がした。
「ちょっと……やっぱり、あいつ。森の中に入った?」
最初に肝試しをした泰子が、唇を震わせながら言った。
「え?」
「泰子! なんか、顔色悪くない?」
「ヤバイよ……あの森……私も皆を怖がらせようと……」
顔を強張らせ、両腕を抱きしめるような格好でガチガチと歯を鳴らす彼女の言葉を聞き返す。
「は?」
「皆を怖がらせようと、森に隠れて叫ぼうと思ったんだけど……」
真っ青な顔をして、肝心なことを中々口にしない彼女に苛立ち、思わず声を荒げた。
「だから、森がどうしたんだよっ!」
「な、なんか、変な唸り声が聞こえて……しかも、ガサガサガサガサって、風もないのに何かが“居る”音がして……でも、あ、私、強がりだし、何も無かった振りして……」
「え……?」
彼女が不安に感じていた内容が徐々に明らかになるにつれて、嫌な予感が頭に過る。
「その後、江美も須藤も、全く問題なく帰って来たから、気のせいだと思って……」
「って事は、もしかしたら、変質者か何かがいたってことじゃねーか?」
話を聞いた結果、最悪な結論に至った僕達は、“ヤバイ”と思い、三人一緒に
お寺の階段を駆け上がった。
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