鎮魂

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住職と叔父さんが来る頃には、既に、空は白んでいた。 三人を境内の中にある小さなお堂の中へと移動させた後は、住職に任せるしかない。 何もすることがない叔父と僕は、叔父が乗って来た車の中で三人が目を覚ますまで待機することにした。 「叔父さん、三人は助かるの?」 『あぁ。今、住職にお祓いをしてもらい、馬たちの魂を鎮めて貰っているからな』 「でも、おかしくない? 僕達、石碑に悪戯した訳でも無く、ただ森に入っただけなのに……」 自分達が悪さをしたわけではないのに恨みを買ったことに対し、納得がいかないでいると、叔父は呆れたような顔をした。 『お前は馬鹿か? 馬たちだって、自分達の意志で、重労働を課せられたわけじゃねぇ。それなのに、餌もろくに与えられず、飢えと疲れでしんどくても、文句も言えなかったんだぞ?』 そう言われてしまえば、“うっ”と言葉に詰まり、何も言い返すことが出来ない。 『馬たちにとって……あそこに眠る殆どの馬たちにとってみれば、人間なんて、皆同じに見えるだろうよ。しかも、せっかく安らかに眠れたと思ったら、また荒らされて……頭にきているところに、たまたま、お前たちが訪れ、馬たちの怒りを買ったんだろう……』 馬たちが眠る森へと視線をやる叔父の、悔しさと哀しさが入り混じったような横顔を見て、僕は自分の身勝手な考えを反省した。
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