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僕の目の前でひよひよと揺れる髪の毛。
結果発表を待つ緊張た空気と裏腹な、あまりにも呑気なその様子に苛立って、思わず髪の毛ごと前のやつの頭をはたいてしまった。
――しまった。
そう思ったところで遅い。
どうしようと新たなドキドキに支配されている僕をゆっくりと君は振り返る。
「なあに?」
泣くでも怒るでもなく振り返り、大きな瞳できょとと僕を見つめた。
「だってひよひよしてるから!」
動揺しきりの僕が完全なる八つ当たりで返すと、君は自分の頭を押さえて撥ねた髪を押さえつけた。
けれど手を離す度にその髪の毛はぴょこと浮き上がってくる。
それが気になってじっと見ていると、髪の毛を直す手を下ろした君は口元に手を当てて笑う。
それから。
「君の前世って猫かもね」
と、大事な秘密を打ち明けるように小さな声で言った。
これが僕と君との馴れ初め。
おしまい。
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