ぎゅっとだきしめて

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「茜、これ頼んでもいいかな?俺、出なきゃならなくて」 ブースに戻ると、元太が大慌てでジャケットを着ていた。 「大丈夫だよ。なにかあったの?」 「うん。取引先でトラブルあったみたいで」 「そっか。気をつけてね」 最近、元太は特定の取引先を任されたりと忙しそうだ。 「さんきゅ」 「あ、元太待って」 「ん?」 あたしはカバンから非常食用のお菓子の袋を出す。 「昼ごはん食べてないんでしょ?車でつまみなよ」 「おーありがと。助かる」 ふわっと笑う。 「あとネクタイ曲がってる」 きゅっと彼のネクタイをまっすぐに直す。 「お。ありがと。頑張れる気がするわ」 「大げさー。頑張ってね」 「おう。それ、頼むな!」 あたしに片手をあげて走ってブースを去っていく。 元太が同期のなかでは1番の出世株だから。 元太には期待してるんだ。 同期の頑張りはやっぱり励みになる。 「負けじと頑張るぞー」 なんて気合を入れて、竜くんを楽しみに仕事を頑張る。
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