1505人が本棚に入れています
本棚に追加
きゆは車に乗せられその会場に向かう途中で、もうどこへ向かっているのか気づいてしまった。
「峰子さん、もしかして、あそこで??」
峰子と明美は顔を見合わせ頷いた。
「急ごう、皆、待ってるよ」
駐車場に着いたきゆは、胸の鼓動が皆に聞こえるのではないかというくらいドキドキしていた。
その結婚式の会場は、この島に唯一立っている桜の木の下にある公園だったから。
桜は満開を迎え四方八方に伸びた枝から咲き誇る花びらで、大きな桜色の天井を作り出している。
幹の根元の近くに小さな壇上が作られていて、そこまで延びる手作りの細い道の脇にはたくさんの人が集まっていた。
「花嫁さん、到着~~」
その掛け声とともにきゆの大好きなウェディングソングが鳴り響く。
すると、背広姿の父親の恭一がどこからともなく現れた。
恭一はもうすでに泣いている。
「お父さん、まだ泣いちゃダメだよ…」
きゆが優しくそう言うと、恭一は静かに頷いた。
そして、その音楽に合わせて二人は歩き出す。
流人が待つ桜の木の下へ…
「え?…」
きゆは一瞬で体の力が抜け、涙が滝のように溢れ出し前へ進めなくなった。
流人の隣には、流人の両親が立っていた。
きゆの知っているいつもの優しい笑顔を浮かべて、きゆを待ってくれている。
最初のコメントを投稿しよう!