花冷えの頃

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明美は美容師の資格を持っていた。 そのため、老健施設の皆のカットは明美の仕事だった。 「もう、こんな素敵な髪結いのセットなんて久しぶりだよ~~ 嬉しいから、頑張らせていただきますね」 明美がきゆの髪をセットしている間に、峰子は真っ白なファーのストールを紙袋から取り出した。 そして、その中から銀色のティアラと白地の短めのベールまでも出てきた。 「峰子さん、それ、いつ準備したの??」 「これ? いつだっけな? 先生から頼まれて、ネットで取り寄せたの」 峰子はそう言いながら、セットされたきゆの頭にベールとティアラを載せると大きくため息をついた。 「よかった… きゆちゃん、凄く似合ってる、もう最高…」 峰子はもうすでに涙を浮かべている。 「峰子さん、もう行かなきゃ、時間ないよ」 峰子は明美にそう急かされ、もう一つの紙袋から真っ白いヒールを取り出した。 「先生ったら、足元まで考えが回らなかったみたいなの。 これは、私と明美ちゃんからのプレゼント。 きゆちゃん、結婚おめでとう…」 峰子も明美も、もちろんきゆも涙を見せ喜んだ。 「よし、じゃ、出発するよ」
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