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「道がまた陥没でもしたんですか」
だいぶおかしなことを聞いているようにも見えるが、この先は先月にも道が陥没して通行止めになっていたのだ。だがそれでも警察官の張りつめた顔を見てものすごく嫌な予感がした。
「どこからか、狼が二十匹現れて、次々に人を襲っているそうです。早く逃げてください。」
だが、逃げる余裕はもうなかった。先ほどまで全く何も見えていなかったが狼がたくさん接近してきていた。おそらくその距離数十メートル。これでは逃げても襲われるだけだろう。僕は死を覚悟しようとしていた。が、その時現実にはありえないことが起きた。僕がゲーム内で飼っている狼がその狼の群れに混ざっていた、というより追いかけられていた。なぜ僕の狼と思えるのかというと、僕の狼だとわかるように首に首輪をつけていた。そしてその首輪には目印代わりに文字を掘っておいた。現実の犬にでもしていそうな話だが、ゲームではリアリティを追求したため、このようなことも出来る。そんなわけで、僕の狼だとわかったわけだが、どうやって助けに行こうか。僕には狼に対抗できるほどの技能は無い。剣道も柔道も大嫌いだ。唯一出来そうなのは、銃を使うことぐらいだ。去年修学旅行でアメリカに行ったときに、ホームステイ先の家族が軍人だったので銃の使い方を教えられた。そのおかげで今ではある程度の距離なら正確に目標に当てることができる。まあさすがにここじゃ銃なんて簡単に見つけられないだろうけど。銃が使えたって僕には無用の長物だ。
「どうしたんだ、じっとしてても何も始まらないぞ。昔なんかのアニメであっただろ、大事なものは戦って守るしかない、譲れないなら戦えってな」
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