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ただ自分の胸にすがってくる少女が、何故だかとても愛しく思える。それは今しがた聞いた彼女の純粋さであるとか、無理して気丈に振る舞う様子のせいかもしれない。
「そのタキシード、処分は貴方に任せるわ。その子は私がどうこうしていい子じゃないから。作り手の貴方にお願いするわね」
漸く翠が泣き止んだ頃、小さく掠れた声が漏れた。
その言葉にユニーが大丈夫?、と視線を投げると、翠は赤い腫れぼったくなった目を細める。
やはり彼女はこうしているべきだ。
ユニーは視界の端に映る真っ赤なドレスを見た。
以前此処にタキシードの注文をしに来た翠は、ユニーの心を捉えていた。あの真っ赤な二つの瞳が自分の事を見ている、と思うだけで注文受けるどころではなくなった。胸の中心がざわつき彼女が笑う度に、切なさでいっぱいになった。彼女が口を開くたび、力一杯抱きしめたくなった。
いわゆる一目惚れというやつだが、生憎ユニーにとっては人生で初めての恋であった。
そのままユニーはタキシードの製作をそこそこに、翠の為のドレスを作り始めた。
何着も、何着も。
彼女の好みが分からないユニーは、色んなパターンでミシンと自分の腕を懸命に動かしていた。
翠の赤い目には、きっと赤いドレスも似合うだろうな。それに、青いのも。でも一番は。
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