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「貴方は、私の方が好きなの?」
「好き…かどうかは分からない。けど、君を思うと美しい生地を見つけた時みたいにワクワクするし、君に似合うドレスを沢山作りたくなるんだ」
それは世に言う好きと言うことと同義なのだろうか。
翠はそんなユニーの言葉を聞いて、困ったように笑ってみせる。
「貴方は、まず好きという感情から学ばなくちゃいけないみたいね」
翠の言葉にユニーは肩を落とす。彼は物心着いた時から厳格な仕立て屋だった父と一緒に洋服ばかり作っていた。母親は彼が物心つく前に亡くなったこともあり、両親が一緒に居る姿は殆ど見たことがなかったのだ。だから愛がどういう感情なのか、愛する恋人達が一体どう互いを愛していることを伝えるのか。彼にはそれが分からなかった。
仕立て屋という職業上翠のように結婚式で使う衣装の仕立てを頼みに来る客は居たが、彼等は一同に互いに微笑み合うだけで互いへの思いを語っているところは見たことがない。それは、考えれば至極当然な話なのだろうが、そのせいでユニーは愛という感情を理解できない。
今回翠にあって、いつもとは違う気持ちを感じることが出来たというのにこうも呆気なく断られてしまうとは。
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