仕立て屋と恋

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足元にかけて広がる裾には、なんとも派手なレースが三重にもなっている。腰の部分には大きな白いリボンが、形を整えた状態で据え付けられていた。 どう見ても、日本人の寸胴短足体型の自分には似合わない。と口の中でモゴモゴと呟いた。 暫し唐突に表れたドレスに呆気に取られた表情で黙視し、細かい飾りを眺めているとそのドレスが喋りはじめた。 「ご不満かな」 そして今度は視線を持ち上げて、ドレスを手に目を細めている男に向けた。ドレスがひとりでに歩いて来たわけでは無かった事に対して彼女はほっとした。 男は隈の浮き上がった目元を細めながら手にしたドレスを揺らした。彼女は彼の見た目を「派手だ」と感じていた。そのお世辞にも綺麗とは言えない朱色のこんがらがった髪、穴の空いたローブ、片手にだけ紫の手袋をしていた。汚ならしい身なりは、古ぼけて乱雑な室内とは合っている。 男は彼女が苦手な虫を見る様な視線を送ると、目尻に皺を寄せて心底嬉しそうに笑う。そんな様子が、彼女には気味悪かった。 「不満よ。貴方は注文の一つも聞くことができないのかしら。ねぇ、仕立て屋さん」 「仕立て屋さんだなんて、そんな他人行儀で呼ばないでくれ。気軽にユニーと呼んでくれよ」 「ならユニー?一つ宜しい?」 ここでで彼女は店に入ってから初めて口を開いた。     
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